いぬがやってきました

にわとりがいぬになった話。


もともとうちのお父さんはにわとりがほしかった。庭に放って草をついばんでもらい、卵も生んだらよいだろうということで、知り合いのたかなかさんに、常々頼んでいたのだった。

そのにわとりがこの春にたまごからかえり、夏をこしてだいぶ大きくなっちゃったけど、いる?というたかなかさんからのお電話。ではいちど伺いますと伝えたまた数日後、たかなかさんからまた電話


「近所のダムで、子犬が捨てられてたんだけど、えぐちさんちのこどもたちに、どうかな。」


わたしはにらみます。犬なんて、無理だから。うちは猫二匹でいっぱいいっぱい。こどもも二匹、いえふたりでいっぱいいっぱいなの知ってるの?すごみをつけて脅しているつもり。


でもさあ、とりあえず、見に行ってみよう。


たかなかさんのおたくは山の上の上。天上のような美しいところにあります。そして、動物がたくさんいます。犬は5匹。やぎ。鶏。豚。猫。楽園のようなそのお家の門にたどり着くと、いつものように、大きなシロクマのような犬や、101匹わんちゃんのようなたくましいぶちの犬などが出迎えてくれました、おや、そこにみなれない黒い犬がその塊の中でわちゃわちゃとじゃれてきます。このわんちゃんが、もしかしたら今回の問題の、わんちゃん?


たかなかさん

「いまね、にわとりが餌食べてちょうど出ていっちゃったんだよね。その間に、ちょっと犬、見る?」


おくさんが、部屋に入って、手の中に抱えて持ってきた子。


それが、その、今回の、問題の、わんちゃんだったのです。


お耳がたれて、目はやさしくて、とっても不安そう。くんくんと、決してなきません。


まずはじめに、みとちゃんがだっこしてみました。はじめて子犬をだっこするみとちゃんと、むぎちゃん。なんだかなんとなく、似ていて。


怖がって座り込んだままのわんちゃん。だっこするとすこし震えていますが、ふっと、その震えが消える瞬間があるのがわかります。


さあ、連れて帰ろうか。


あれ?これ、だれが言ったセリフでしょう?!


みんなの一致の意見で、連れて帰ろう。家族にしてあげよう。

何よりも驚いたのは、私が、このわんちゃんを一瞬で好きになってしまっっということなのでした。


たかなかさん「にわとりっ、どうする?」

結局帰ってこなかった鶏は諦めた、というかみんなの頭はすでにこのワンコでいっぱいで軽く忘れ、

帰りの車の中には、鶏を入れるつもりだった猫のケージに、犬が入っているという、おかしな状況に。


犬なんて一生飼うことはないと思っていましたが、それが、一瞬にして、変わってしまった。

人生なんて、なにも決まったことは、ないのですよね。


しかし、こんなかわいい子を、捨ててしまうという選択が、どうしてどうしてあるのでしょう。

ダムのそばで去られた飼い主の後ろ姿を見てしまったこの子のことを思うとたまりませんが、たかなかさんは、去っていったトラックのあとからすぐにこの子を救い上げた。そして、三日後にはうちに、きた。もしかしたら、

あなた、とっても、ラッキー!?


すぐに、この辺では評判の動物病院に連れて行くと、どうやら兄弟らしき同じような顔をした

子犬がやはり保護され、連れてこられたとのこと。よかったね。兄弟も、無事だったみたい。


さあ、子犬との生活がはじまりました。トイレのトレーニング。散歩。とにかくほめてかわいがれ!!!

という教訓をたかなかさんからいただきそれをまじめに取り組んでみましたら、まあ、元気で良い子に育っておりまして。


この「愛されるために、うまれてきた」みたいな子がそばにいると、わりと普通の日常の中でもたくさんの笑顔がうまれて、いい子いい子と、褒め称える言葉は自分をも元気にしてくれる。

とにかく、無理やりでも前向きにさせてくれる。前向き方向に、していける。面白い。


今日も冷たい風の中、散歩に出かける。近くてもなかなか通らなかった美しい道や、景色。

短い足を必死に動かしながら私の前を走るこの子に、なんだかいろんなものを、見せてもらっています。


麦。と名付けました。これから、よろしくー!






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